現行税制と税制改正案の比較
昨年12月に公表された平成23年度税制大綱が発表されました。税制改正大綱については以前ブログでお伝えしましたが、今回は現行と改正案の比較や、徐々に明らかになってきた詳細等を踏まえ、法人税を中心に解説します。なお、本大綱はまだ国会において可決成立したものではない旨ご留意ください。

1.法人税率引き下げ (減税)
<現行と改正案>                
資本金の額が1億円超である普通法人
・・・一律30%              → 一律25.5%
資本金の額が1億円以下である普通法人
・・・所得金額年800万円超30%      → 25.5%
年800万円以下本則22%(特例18%) → 本則19%(特例15%)
適用期間 H23.4.1 ~ H26.3.31開始事業年度より
<改正前後の比較(資本金1億円以下の普通法人(中小企業)の場合)>
 所得金額1,000万円の場合(法人税)
  現 行  144万円+60万円=204万円  差額33万円
  改正案  120万円+51万円=171万円 (実効税率では差額50.5万円)

2.減価償却率(定率法償却率)の見直し (増税)
<現行と改正案>
定額法償却率を2.5倍した数 → 定額法償却率を2倍した数
適用期間 H23.4.1以後取得償却資産より
経過措置 定率法を採用している法人が、H23.4.1前に開始し、かつ、同日以後終了する事業年度に
おいて取得した減価償却資産は、現行の償却率により償却することができる。
<改正前後の比較>
 取得金額1,000万円、耐用年数5年の場合の減価償却費
  現 行  1年目 500万円  2年目 250万円  2年の差額110万円
  改正案  1年目 400万円  2年目 240万円 (実効税率では差額約39万円)

3.欠損金の繰越控除(増税)
<現行と改正案>
大企業・中小法人等とも制限なし → 中小法人等は制限ないが、大企業は所得金額の80%相当額まで
開始時期 H23.4.1以後開始事業年度より
繰越期間 7年 → 9年(大企業とも)
開始時期 H20.4.1以後終了事業年度において生じた欠損金額より

4.貸倒引当金制度の適用法人の限定 (増税)
<現行と改正案>
大企業・中小法人等とも個別評価金銭債権、一括評価金銭債権等の引当金が計上可能
→ 中小法人、銀行、保険会社等は現行通りだが、大企業は上記引当金の計上廃止
激変緩和措置 大企業には4年間の激変緩和措置があり、また公益法人等には特例がある
適用時期 H23.4.1以後開始事業年度より

5.その他
 1.一般の寄付金の損金算入限度額の引下げ等 
  一般寄付金の枠を縮減し、特定公益増進法人等に対する寄付金枠を縮減額分拡充する
 2.「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の導入に伴う措置(増税)
陳腐化償却制度の廃止他
 3.グループ法人税制の見直し(増税)
  100%グループ内の他の内国法人が、①清算中、②解散が見込まれる、③グループ内で適格合併により解散することが見込まれる等に該当した場合、その株式について評価損を計上しない他
 4.棚卸資産評価の切放し低価法の廃止(増税)
  商品評価損を計上している企業は洗替え低価法への変更が必要
 5.仮決算による中間申告の見直し
  仮決算を組んで中間申告を行う法人は注意が必要
 6.研究開発投資減税の見直し (増税)
  ①試験研究費の総額に係る税額控除と、②増加試験研究費による税額控除があり、現行は①の税額控除限度30%(特例)と②の税額控除限度10%を合わせて40%を限度としていたが、改正案では①を原則の20%に戻し、合計で30%を限度とする
 7.中小企業等基盤強化税制の廃止 
  H23.3.31取得供用分まで、中小企業投資促進税制に引継がれる
 8.消費税における免税事業者の要件の厳格化(増税)
  消費税の課税事業者の判定を行う事業年度を、現行の前々期ではなく、前事業年度開始の日から6ヶ月間で、課税売上高が1,000万円を超えるがどうかで判定する
9.消費税の仕入税額控除制度におけるいわゆる「95%ルール」の見直し(増税)
金融業(受取利息)、不動産貸付業(居住用の貸付)、社宅を持つ事業主等は注意が必要



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