07年10月10日

相続と人の心

 日本の法律では、相続や遺言に関する法律は比較的明解でわかりやすいようです。しかし、なかなか法律どおりにいかないのが人の心でもあるようです。
 法定相続の場合でも、確執を生じることがあります。動産、つまりお金だけの相続の場合はきっちりと数字で表すことができます。それでも、特別受益といって生前に贈与を受けたり、寄与分といって生前に故人に貢献した分があると少々複雑になります。

 さらにやっかいなのは、不動産の相続です。固定資産評価、路線価、あるいは実勢価格など不動産の評価法は数種類あります。売却してお金にしたうえで分割するのであればわかりやすいのですが、不動産のままで分割する場合は、公平な分配方法がなかなか見出しにくいようです。
 また、既存の土地を分筆する場合などは、角地や方位などによって、評価に差が出てしまうこともあります。またいくつかの不動産がある場合、思い入れや将来の価格評価の変化なども考慮しなければならないこともあるようです。

 「遺言があれば、ここまで争うことも無かったのに…」といったケースもあります。
財産が多いと争いが起きやすいように思いますが、むしろ今は、少ない財産にもかかわらず問題に発展してしまうケースの方が多いように感じます。
 今の時代は、親族間でも関係が希薄です。わずかな価額で争いや確執が起きているケースの多くは、心の問題のような気がします。気持ちを判って欲しい相手が判ろうとしないとき、問題が起きるようです。

 わずかな価額のことで相手となかなか話し合いができないとき、相手が本当は何を望んでいるかを考えてみる事が解決の糸口になるかもしれません。お金や土地よりも、もっと欲しいものあるのかもしれません。案外それが心の部分である事に気付くかもしれません。
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07年10月10日 | Category: 家族関係・相続・遺言
Posted by: sakata
 2007年、団塊の世代の大量退職とともに、日本は高齢化社会から高齢社会に移行したそうです。高齢になると、どうしても認知力などが低下します。そのため、詐欺の被害や不当契約の被害にあいやすくなったり、財産管理がおぼつかなくなったりします。
 
 そういったことから社会的な保護を受けることができるように、成年後見制度があります。高齢者や障害者に対する差別をなくし、自己決定を尊重するとともに、取引の安全と本人の保護を目的とするための法律でもあります。

 法定後見と言って、本人の事理の弁識の程度に応じて、家庭裁判所にこれを決めてもらう方法があります。また、本人の意思で事理の弁識がはっきりとしているうちにあらかじめ後見人を決めて契約しておく任意後見という方法もあります。

 任意後見制度の場合は、契約内容を公正証書にして登記した上で、本人の事理の弁識が不十分になったとき、本人の意志で後見開始を決めることもできます。ちょっと記憶力が怪しくなったり、認知力が低下した時から開始でき、家庭裁判所で後見監督人を決めてもらいます。
 任意後見は特に本人の意思が優先され、後見人を自分の信頼のおける人に頼めるうえに開始の時期も自己決定できる制度ですが、まだあまり利用されていないようです。

 社会的な認知が低いこと、法定後見にある取消権がないこと、財産管理のうえで迅速性にかけることなどが指摘されているようです。迅速性については財産管理委任契約などとあわせて利用することで補うことができますが、受任者を完全に信頼してこそなしうる契約なので、この制度が受任者に悪用されないことを強く願います。しかし、これからの時代を心穏やかに過ごす上で、こういう制度があることも知っておくと良いかもしれません。
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07年10月03日 | Category: 家族関係・相続・遺言
Posted by: sakata
 養育費の相談を受けていると、養育費に対する権利や支払われない時の法律について聞かれます。日本では、子どものいる家庭で、離婚時に養育費の取り決めをしているケースが全体の30%しかありません。しかも、支払いが続いているのは17%程度と言われています。
 本来、養育費とは、離れて暮らす子どもが経済的にも健全に育つ事ができるように、離れて暮らす親が子どもを育てている親に支払うべきものです。離婚は親の都合であって、子どもにはまったく責任のないところです。養育費とはその意味で子どもの権利であるとも言えます。

 民法の中に、債権債務という考え方があります。債権と債務は相対するもので、片方に債権が生じれば他方に債務が生じます。そして、債権が生じた時同じ人に債務も生じます。
 例えば、店で100円の商品を買う時、買う人は100円を支払うという債務を負い、商品を受取るという債権を手に入れます。店側は、100円を受取るという債権を手に入れると同時に商品を渡す債務を負います。権利と義務はこのように同時に発生し、ただ権利だけということはほとんどなく、権利の裏側には必ず義務が付随している事になります。

 最近は、子どもを育てる側が養育費を受取る権利ばかりを主張して、その裏側にある義務について忘れてしまっていることを感じます。もし、権利があるとすれば当然に相手に対する義務があるはずです。養育費相談の時は、その義務についても考えていただきます。
 「子どもを健全に育て、それを相手に伝える事」多くの方から、こんな答えをいただきます。私もその通りではないかと思います。養育費を受取る側には、相手に対してその義務を負います。離婚後、なかなか子どもの状態を知らせることが困難だったり、相手がそれを望まないケースもあります。でも気持ちの上で、そんな義務を負っていることを忘れずにいたいものです。

 とかく今の世の中は、権利ばかりが主張されがちです。権利と権利はぶつかり合います。債権債務の考え方にある、権利の裏側にある義務についても考えていただく事が大切と考えます。養育費を例に取れば、離婚するご夫婦がこのような視点で話し合ったケースでは、離婚後養育費の支払が順調である事が多いようです。
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07年09月25日 | Category: 離婚・夫婦関係
Posted by: sakata
 このブログで何回か取り上げてきましたが、モラルハラスメントに関わるご相談が増加しています。その背景には、この言葉が世の中で徐々に啓蒙されてきた事もあげられるのではないかと思います。日本の夫婦関係の価値観の中には、「夫唱婦随」という考え方があります。そのため、夫の理不尽な要求やわがままな指示に対しても、妻はある程度は我慢をするべきといった風潮が根強くあるようです。

 それが妻に対する精神的な加害行為であっても諦めていたり、あるいは精神的な従属関係が出来上がってしまい、一人で抱え込むことがほとんどだったようです。モラルハラスメントという言葉が啓蒙されていく中で、自分がその被害者だった事にあらためて気付く方も多いようです。もちろん夫の理不尽な要求すべてがモラルハラスメントかどうかは議論のあるところです。また、最近は女性がその加害者である事例も少なくありません。

 加害側の精神構造として、自分のことにしか関心が無く、特別な存在だと思いこむ自己愛性人格の傾向がある方が多いといわれているようです。しかし、最近は特にそういった傾向がなくても、夫婦の力関係の中で起きてしまうケースが目に付きます。物質的に恵まれ不自由のない社会が、相互受容という人間関係にとって大切な要素を取り去っているような気がします。

 モラルハラスメント傾向のある方の性格を変えることは非常に困難のようです。また、多くの場合結婚以前は非常に人当たりがよく、スキルも高く見えます。もともと、相手を支配しようとする欲求と自分を良く見てもらいたいという欲求は同じものである事が多いため、これが強いと結婚した後に豹変する事もあるようです。

 一方、被害を受けている方は、一人で抱え込んでしまいがちです。責任感が強く真面目であると、人にこういった被害を打ち明ける事がなかなかできません。自分で解決するべきことといった考えが切り離せません。しかし、その事がかえって事態を悪化させてしまう事も多いようです。むしろ、誰かに打ち明けたり相談をする事で事態を見直すことができます。

 ご自身が被害を受けていることに気付いたときは、勇気を持って信頼できる方に相談をされるのがまず解決の第一歩ではないかと思います。また、相談を受けた方は、「我慢しなさい!」といったお説教をするのではなく、まず、「よく聴く」ことが大切な事ではないかと思います。そして、相手に対し、こちらが苦痛を受けていることを相談者自身がしっかりと伝えていくことができるように支えることが求められます。
 
 多くの場合、第三者が間に入っても、一時改善するもののまた元に戻る傾向があります。間に入って加害者に説教をすることより、被害者が自信を持って相手に対応していけること主体に考えていく方が、より良い解決を生み出しやすくするようです。
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07年09月20日 | Category: 離婚・夫婦関係
Posted by: sakata
07年09月12日

離婚時の年金分割

 このところ、離婚時の年金分割の公正証書作成依頼が多数入るようになりました。ご相談も相変わらず多いのですが、実際に実務に携わるといろいろな点が見えてきます。
 その一つが、厚生年金と共済年金では受付窓口が違うことです。時々、この両方に加入されている方がいて、どちらか一方だけをやれば両方の分割ができると思っている方も多いようですが、それぞれの手続きが必要です。

 公証人の多くが、作成の際、情報提供通知書の添付を求めてきますので、まずこれを申請するところからはじめる必要があります。
 今、社会保険事務所が異常に混んでいて対応にてんやわんやしているようです。年金受給の問題などと年金分割が同時に起きたため、正直なところ、かなり曖昧な対応があるようです。年金分割についてはまず、自分自身で調べられるところをちゃんと調べ、それでも判らない部分を相談に行く事が望まれるようです。

 また、以前ブログでも書き込みましたが、2007年改正と2008年改正がちゃんと一般に理解されていない事を感じます。特に2008年改正については誤解をされている方が多いようです。

 2008年になると、仮に専業主婦の場合でも、夫の厚生年金が最初から分割されていくようになります。この年金分割はあくまで、2008年以降の分に限られています。ですから、2008年以降に結婚した方は、はじめからこの適用を受けます。しかし、それ以前の分までもが、自動的に分割されるわけではありません。ここが誤解を受けているところのようです。そのため、もし2008年の法改正以降に離婚をした場合でも、それ以前の分の年金分割については協議を持たなければならないことになります。

 「2008年になれば、今までの分すべてが分割を受けるのだから、それまで待った方が良い」と思っている方も多くおられるようです。
 行政の申請や法律手続きは、仮に間違った解釈をしていても、確認しない限り誰もそれを指摘してくれません。2008年改正を誤解していて、後で申請し直しても通らない可能性があります。事前に十分に調べる事と、良い相談者を探す事を是非念頭に入れていただきたいと思います。

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07年09月12日 | Category: 離婚・夫婦関係
Posted by: sakata
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