平成20年8月29日に、厚生労働省が平成21年度税制改正要望を発表しました。その要望の中で、医療業界に直接関係があるものとして、

1.特定の社会医療法人に係る固定資産税等の非課税措置の創立
2.社会保険診療報酬等に係る消費税のあり方の検討
3.法人税率の引き下げ

などがあります。今回は医療機関において消費税が導入されて以来問題となっている2の消費税の考え方について触れたいと思います。

 消費税は「預り金」であり、消費税を負担するのは原則として、最終消費者である患者ですが、消費税の納付を行うのは、患者ではなく、医療機関等が行うことになります。その納付する消費税の額は、預かった消費税から支払った消費税を控除した残額となりますが、医療機関の収入の大半を占める保険診療報酬は消費税法上非課税とされ、消費税が課税となる収入は自由診療・物品販売収入などに限られています。つまり医療機関の場合は、非課税となる保険診療の収入がほとんどで、患者から預かっている消費税がないにもかかわらず、薬剤・医療材料などの仕入れに係る消費税を支払っていることになり、支払損が生じてしまうことになります。医療に対する消費税は非課税とされていますが、患者の消費税負担をゼロにし、医療機関が消費税を負担するという仕組みになっており、結果医療機関の経営を圧迫する問題のひとつとなっています。

 消費税率の引き上げが議論されている中、仮に消費税が10%に増税され医療機関における消費税の損税問題について何ら動きがなければ、それは医療機関にとって死活問題となります。
 この問題を解決するために、保険診療報酬を課税へとする考えもありますが、そうなると患者の負担が増えてしまいますし、患者から消費税を取ることは医療が非営利である原則を崩してしまうことになります。
 もう一つの考えは、日本医師会などが以前から要求している保険診療報酬を「ゼロ税率(免税)」にしようというものです。こうすることが患者も医療機関も消費税負担をなくす一番の解決策ではないかと考えますが、現在免税とされているのは輸出に絡む取引に限られていますので医療が免税となるのは難しいと思われます。厚生労働省の要望が消費税の損税問題の解決の後押しになることを願います。

 現行制度では、医療機関の消費税の計算はもちろん事業税の計算についても、一般の企業とは異なり医業特有の問題が多くありますので十分な注意が必要となります。

【参 考】
   平成21年度厚生労働省税制改正要望
   「病医院の消費税」 東日本税理士法人編
   消費税法6条、7条  消費税法別表第一

文責 医業部


にほんブログ村 士業ブログへ
↑↑ランキングに参加しています。クリックをお願いします。

Pronet Group HP
↑↑弊社ホームページもぜひご覧下さい。




なかのひと