◆同病相哀れみの人脈に懲り固まるな
 ずっと昔から、同病相哀れむ同士ほど、親しい間柄が多い。
「恥さらしを承知でいえば、売上ガタ減りで、参ってるんだ・・」と、A社長。
「うちも同じで、どこも似たようなもんだ。あんただけじゃないよ」とB社長。
こういう同病相哀れみの共感心理に、一時とはいえホッとする心理は、いくらホッとしても何の解決にもならず、傷のなめ合いに終わるだけ。
 こういう社長に多いのは、“異業界に親しい人がいない”。
 同業とは広い意味でライバルだ。その上、手持ち情報が同じだから、いくら親しく言葉を交わしても、意外性にハッとするような、広い情報や話題の交流は何もない。
 ところが、本業不振の危機脱出のため異業界に進出するとか、本業の弱点を補うために、本業とは異なる脇固め(多角化)をやるとかいう社長は、同業以外の異業界にも、たまには飲んでバカを言い合える知人を、数人は持つ必要がある。
 
◆柔らかな頭脳こそ“経営の知恵”
 異業界にも親しい知人がいるということは、互いが相手の情報死角を相補う関係となり、お互いが、相手の視野や情報世界を広げることになる。要するにお互いに物知りになるということ。
 人間は、“物知りの範囲でしか、経営の知恵は出ない”もの。異業界に親しい人を持つ人に知恵者が多いのは、こういう背景を持つものである。
 ある米穀問屋の社長は、タクシー会社も経営し、喫茶店も経営し、弁当ショップも経営している。喫茶店は女性客に好まれるように、インテリアにも配慮し、メニューには、人気のケーキを安くしたり、女性が好きな占い勉強会を毎月1回開催している。
 焼肉店も経営し、喫茶店利用の客が、この会社のお米店から米を買うようにもなる。
 一業種一業態にまっしぐら経営ではなく、複数業種の複数業態に危険を分散し、経営安定度を高めている。この社長の趣味はヨット。たまに語り合うと、話題は広く好奇心も強い。
 この柔らかい頭脳が、経営の“知恵の素”になっているようだ。