ある田んぼがレンゲの花で満開になると、近所の養蜂家(蜂蜜採集)が、大いに潤うという関係から、この養蜂家は“レンゲの花満開”という隣接経済の恩恵を受けたと言えよう。
 インターネットが普及し、紙の新聞を読まなくても、ニュースの要点はネットで読めるようになると、紙の新聞は売れなくなるだろう。そして、そのとおりになった。
 新聞購読者の増減に、“ネットの普及”という隣接経済が、マイナス影響をしているのだ。
 では隣接経済の影響を感じ取る感覚が、鈍感だとどうなるか。

 いまやテレビや新聞で、“電子書籍”に関する報道が盛んである。
 いまパソコンを使い、ダウンロードをして情報を入手している人は、利用法も簡単に理解できると思うが、もし電子書籍が普及したら、どんな業界にどんな影響をもたらすだろうか。
 真っ先に思いあたるのは、書籍印刷を営業の中核にしている印刷会社であろう。もちろん書籍にも、電子向きとそうでないものもある。電子向きの書籍を多く印刷している会社は、“電子書籍の普及”という隣接経済に、危機感をもって対処しなければならなくなる。
 また新聞広告では、“書籍広告”は広告収入の中の王者であった。この書籍広告も減るはずだから、ネットの普及で購読者が減った上に、広告収入まで減るリスクが予想される。
 踏んだり蹴ったりの新聞業界、ということのようである。
 さて貴社の場合、どんな業界が“隣接経済”でしょうか。
 タイヘイという会社は食材の宅配で知られているが、じつはこの会社、千葉県に明治13年に創業した味噌醤油の醸造メーカーの老舗なのだ。
 ところがタイヘイは、“会社の社員食堂の増加”という隣接経済を見ていて、調理に便利な食材供給を昭和37年に、そういう事業所に宅配するという事業に多角化したのである。
 そしてさらに老人に限らず、「単身者家庭が増えるばかり」という隣接経済に着目し、栄養士によるカロリー管理をした、お弁当の個人宅配も始めた。
 そのタイヘイ、知らない人のために、現在の規模をご紹介しよう。
 本社は千葉県、本部は東京の江戸川区、従業員数およそ2千300人である。一応九州から北海道までのネットワークも進めている。
 貴社では、何が隣接経済ですか? その動向への観察と分析は大丈夫ですか?
 “隣接経済”(ネクスト・エコノミック)、どうぞお忘れなきよう。