「限定正社員」で指針案…解雇回避努力求める
読売新聞 6月14日(土)11時0分配信

≪非正規雇用で働く人たちの正社員への転換を促すため、政府が検討を進めてきた限定正社員制度について、厚生労働省は13日開かれた有識者懇談会で、企業が導入する際の留意点をまとめた指針案を提示した。
 解雇ルールについては、整理解雇の前に「転勤や配置転換などの打診を可能な範囲で行う」などと注意点を明示し、回避する努力を求めた。≫


「限定社員」とは何者か。
企業の人事権が制限された雇用契約を結んだものを謂うとして、その制限は個々の契約特約による。
この「限定特約」契約は昔からあり、また明記されたものでなくとも労使間においての有り様からしてそのような契約を結んだものといえるとして裁判所で認められてきた。
したがって、この運動も定着した判例の法律化といえなくもない。

トラブルのポイントは当然ながら、その特約のために契約の続行が困難になる場面である。
・特定の能力を必要とする事業部門を始めたため雇い入れたが、その事業は不振のため廃止することになった。

このケースが最多であろうが、解雇は可能としても、やはり企業がその事業のためにどれくらいの投資をしたのか(及び成功の見込み)などは追及ポイントになろうし、その審議によって補償が変わってくるであろう。つまり、安易に部門を立ち上げるという行為はチャレンジ精神として褒められるとしても、労働者への補償なくしては経営者たる面目が立つことはないという理屈である。

なお、事業全体にかかわる整理解雇や配転については、契約特約の人事権制限と抵触するかしないかが追及される。抵触する場合も多いが、個々の事案によっては抵触しない場合も考えられるので、その場合は限定社員であろうとなかろうと同じ扱いとなる。
しばらく情報収集していく。
14年06月16日 | Category: General
Posted by: roumushi
14年06月11日

年収1000万円

労働時間の規制撤廃―甘利再生相
時事通信 6月10日(火)21時26分配信

《甘利明経済再生相は10日、産業競争力会議後の記者会見で、政府が導入を決めた労働時間規制を撤廃する新しい労働時間制度について、年収1000万円以上を対象にする方針を明らかにした。》
《厚生労働省は5月、制度導入に際し、対象を年収数千万円の為替ディーラーなどの「世界レベルの高度専門職」に限定する案を示した。
 これに対し、甘利再生相は10日の会見で「日本にそんな人がいるのか。探すのも大変なぐらいだ」と批判。高い技能を持つ年収1000万円以上に対象を広げる考えを示した。
 国税庁の統計によると、年収1000万円以上の労働者が全体に占める割合は3.8%。甘利再生相は技能や職務範囲などで条件を絞り、新制度の対象者を全体の1、2%とする意向だ。》

もともと経営者団体の提案に何ら合理性も説得力もないため、もはや素人法案でしかなくなっている。どういう理屈で産業競争力がつく提案なのかが明瞭どころか接点すら見つけ難い。どうせなら、江戸時代のように借入金帳消しであるとかせめて金利付き貸付禁止と無効など思い切った提案をすべきである。それほどまでに切迫していたのかと如実にわかる。

「日本にそんな人がいるのか。探すのも大変なぐらいだ」と言っているが、それくらいにこの法案の意義がないのだ。経営者団体の恥として残る。
やはり経営者よりも労働者の方が、経営能力の点では上ではないか。無論、かつての労働団体ほどではないが、経営者が労働団体の提案を受けてそれを執行していくというやり方が、日本においては成功する可能性が高い。尤も、今のところ、労使ともに、日本産業を代表しうる者はいない。
だからこそ、国に実験企業を経営者から提供させ、データ管理及び報告を逐次公開しながら、その効果を測定しその是非をみていくというプロセスが必要である。国の法律に影響を与えるという行為はそれだけ大きい。また、法案成立後は「無責任」という従前の慣習から脱し、法律施行後のコントロールを常に監視できていなければならないことからも、実研企業の提供は義務付けられるべきである。

なお、雇用主が実労働時間、休日、休憩、深夜労働規定の適用を外すということはどういうことになるのか。単に賃金とのリンクを外すだけのようだが、それならば従前通り大枠の就業管理及び民事賠償責任等はそのままである。無論、人事権は雇用主にあるのだから、その反対の責務はそのままである。そうなれば、雇用主はそもそも管理していない状態にほぼ近いものであるため、労働者の一方的な主張しかなく、雇用主は抗弁できるものを持たない。無過失責任のリスクがあるといえる。それならば業務上に関わる刑法適用条項をあらかじめ法案に設定しておいた方が親切である。
14年06月11日 | Category: General
Posted by: roumushi
14年06月06日

労使自治

スウェーデンの労使関係―協約分析を中心に―労働政策研究報告書 No.165

労働政策研究・研修機構
のメルマガを取っていると色々な研究がなされている。
ヨーロッパ諸国における労働組合(=労使自治)に関する研究はますます注目を浴びる見通しであるため、ちょうど格好の研究報告であった。

HPによると引用は困るというので面倒だが、とにかく日本の場合では、経営者団体の提案する内容は批判に耐えられないものばかりで、この程度の経営者の下では今の日本の労働者は苦労が絶えないなというものばかりである。一方、企業内労働組合は煮詰まっている。なお地域ユニオンの活動が本来の組合法に沿った活動をしているともいえるが、個別案件が主である。
戦後の労働組合は戦前戦中の流れを汲みながらも積極的に労働者をバックアップし、また労働側弁護士は手弁当で訴訟代理を引き受け、数々の判例を裁判所に認めてもらっている。賃金制度をはじめとする労務管理手法は労働側からの主張であり、経営側からの批判に耐えうるものであった。それはしばらくの間上手く運用できていたが、経済自由化により多国籍化するに伴い、当初「日本型労務管理経営が最上」と労使いずれも(既に「日本人」という単位となっていた)頑張っていたし、またジャパン アズ ナンバーワンとも評価されていたのだが、退職金債務をはじめとする日本企業の財務問題が表面化し一気に自信喪失の時期を迎える。
それからもうガタガタ経営で、見るも無惨な有り様である。バブル時の富もそれ以上の負債となる。もはや理屈ではない、合理的だの何だのどうでもよい。(もともとバブル期は理屈ではなかったわけで、バブルの前後を通して既に日本は狂っていた。)現経営者団体は未だにこの流れから抜け出せていないが、労働者側は隠喩ではない本当の意味での死活問題になることから狂うことからもう出ている。

今が、労働側から、経営側の批判に耐えうる主張を出すべきである。


※ リンクもできないように設定されているようなので、以下の通りお進みください。

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14年06月06日 | Category: General
Posted by: roumushi
「平成25年度個別労働紛争解決制度」の施行状況

《平成25年度は、前年度に比べて、総合労働相談、助言・指導、あっせんのいずれも件数が減少しました。ただし、総合労働相談の件数は6年連続で100万件を超え、高止まりしています。
 また、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と、2年連続で最多となりました。》

≪*1 「総合労働相談」: 都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物などに、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応。
*2 「助言・指導」:民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向を示すことにより、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度。
*3 「あっせん」:紛争当事者の間に、弁護士や大学教授など労働問題の専門家である紛争調整委員が入って 話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度。双方から求められた場合には、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示する。≫


「総合労働相談」はあらゆる相談の入り口ともいえ、そこから各所各部署への案内が行われている。セクハラや育児介護休業問題なら労働局均等室へ、派遣問題ならば需給調整部へ、労基法違反なら労働基準監督署(つまり監督官)へ、審判等裁判所での解決ならば弁護士会へ、一人で難しいとか経営管理問題なら気に入ったユニオンへと、労働事務所も調整という制度がありますと。<社労士会への案内は滅多にない。紛争解決の実力がまだ社会的に認められるまでには至っていないということか。>
 無論、助言やあっせんは「総合労働相談」で受けるものである。あっせんは当事者による事前交渉が決め手であり、すなわち訴訟における和解勧告のタイミング寸前相当にまで当事者どうしでのやり取りが重要なのである。訴訟に至った場合の結果が両者にある程度見えていなければ解決に至り難いものである。したがって、手続きは比較的容易であるためにかえって、あっせん不参加の回答をもらいやすいという結果になっている。また、私法上での紛争解決というのも慣れないため、当事者としての自分が何とかしなければ何も生じないという理解に欠けがちである。ちなみに、弁護士も結構誤解されているのだろうと推定される。

「いじめ、嫌がらせ」については従前の世相分析であるならば、解雇が難しいため、過度な締め出し行為という意味合いというものであったが、近頃はどうもそうではない。明らかに職場秩序と教育・育成システムが乱れ、確立できていないことによるものという意味合いが強くなっている。つまり、決して2次的な行為ではなく、それ自体が目的なのであって組織と人間関係が崩壊しているとしか分析できない例が増えている。
14年06月04日 | Category: General
Posted by: roumushi
「俺はデキる」という人ほど要注意?「残業代ゼロ」の対象はTHE PAGE 2014/6/3 14:00 (文責・坂本宗之祐)

《このテーマを話し合ってきたのは、政府の「産業競争力会議」。ここで5月28日、新しい労働時間制度の案が示された。提出したのは長谷川閑史氏。武田薬品工業社長で、経済同友会の代表幹事を務める人物だ。事実上、この案こそ日本企業の多くの経営者たちが「実現したい」と考えている制度と言ってよいだろう。
資料は計7枚で、タイトルは「個人と企業の持続的成長のための働き方改革」。この5枚目に「新しい労働時間制度の対象者イメージ」という、そのものズバリな記載がある。じっくりみてみよう。ここでは、たて軸とよこ軸のグラフが描かれ、働く人材を分類している。たて軸は「能力・経験・実績」。よこ軸には「業務・執行、労働時間の裁量度」。それぞれ、能力(裁量)が高い人ほど、上方向(右方向)に向かう。逆に、能力や裁量が低い人は、下方向(左方向)に割りふられることになる。》

厚労省がディーラーなど特殊業務に限定したことに対して、長谷川氏はまた案を出してきた。新案といっても従来の路線とまったく変化なし。

私が最も嫌悪する点は、長谷川氏が「理念」的すぎることである。日本におけるマルクス主義運動と同じ現象で、リアリズムに支えられていない。
したがって、どうしてもというならば、その合理的な必要性を現実データを提出して納得させなければならない。その発想すら欠けているため、一体長谷川氏は会社の実務面を何もできていないのではないか、肩書きだけで通る会社なのか、まぁ製品さえよければ経営は難しくないしネームバリューもしっかりしてるからだろうとしか考えられないのだが、説得力を求めるとすれば、そのやり方がよいということを証明する方法として、武田薬品工業もしくは関連企業を政府の管理下に移し、徹底して実験データを収集し、月次単位で経過報告を公開し、理念の現実化テストとして批判の対象とすべきである。結局このような実験を行わず、えいやと法施行していったため、本来机上で批判すべきであった問題がそのまま現実化しているわけである。
理論としては前に言ったが、労働時間と賃金はそれほど関連性はない。初任給だとか基本給だとかまた賞与について、誰が時間と関連させていると教えているのか。各企業が採用の難易を考え合わせたり、社員構成を考え合わせたり、資産状況を考え合わせて決めているのであり、断じて労働時間でこれらを決めていない。労働時間が関わってくるのは時間外手当という特殊な一部の計算のものでしかない。
加えて、裁量労働制が現にあるため、長谷川氏の目的は休日労働と深夜手当を支払いたくないということに尽きる。

私が求めるのは、現実面で弊害があるから法改正しなければならないとする必要性のみであるが、合理的な説明もなければその観点すらない。理念だけで実はカラっぽであることが最も懸念される次第である。マルクス主義運動そのものがどうのこうのというのではなく、理念だけで運動してしまうということへの不信と警告なのである。
14年06月03日 | Category: General
Posted by: roumushi
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