◆ただ速いだけで幹部とは、情けない
 「速い」というのは、“動きがハヤい”とか、動作がすばしこいことをいう。しかしこのハヤさには、意志というよりは、肉体的な動作の意味が大きい。
 一般社員としてなら、こういう“速さ”も、評価に値する。
しかし、一方の「早い」というのは、肉体的な動作というより、意志を表す意味が大きい。
 「彼は約束を守る人で、約束の期限より“早い”ことはあっても、遅れることはない」などという場合の“早さ”には、約束に堅いという意志が働いている。
 こういう“早さ”こそ、部下を育てる立場の幹部にとって、最低の条件といえるようだ。
 ところが、意志というより肉体的な動作の“速さ”を見ただけで、「意欲が旺盛で見どころのあるやつだ」と評価し、幹部に引き上げることも少なくない。
 しかし、注意が必要だ。会社というたくさんの人が働く組織の中で、そこで決められた「ルール」「期限」を守って行動すること。そして、その重要性を理解できることは、幹部として非常に重要なことである。


◆速くはないが、早い人こそ評価せよ
 芸能界にも、五月みどり、石坂浩二、片岡鶴太郎、ジュディ・オングという人たちのように、プロとしても通じる力量を持つ書家や画家がいる。みんな超忙しい人ばかりである。ではこういう人たちの動きは、そんなに“速い”かというとそうではない。
 そんな慌ただしい、落ち着かない様子を、われらに見せる人たちではない。
 しかし強い意志と段取りで、期限までにはやり通す“早さ”は身につけている人たちだ。
 決して速くはないが、肝心なことは早いのである。
 さて、動きは速いけれども、期限に間に合わない仕事をする人や、肝心な場面に遅れる人に比べると、“速くはないが、早い仕事ができる人”に共通するのは、つぎのことである。
 1、期限を定めた目標を掲げ、仕事をしている。
 2、優先順位を決め、仕事を賢く選択して行動している。
 3、意味のないこと、どうでもいいことはやらない。
 4、目先のことに心を奪われず、仕事全体を包括的に捉える能力がある。