●社長が作業をやる会社に発展なし
 ○○製薬という会社がある。創業者が研究開発した植物由来の強壮剤は、旧厚生省から薬品としても認められ、リピーターも多く、安定した人気に定評がある。
 しかし、経営環境は、三代目の若い経営者の時代を迎え、ここ5年ほどじりじりと収益力は低下する一方。いくら定評のある強壮剤とはいえ“新戦略は何もなし”では、革新的なマーケティング戦略で市場を攻める同業他社に市場を浸食されて当たり前。じり貧そのもである。
 では、肝心の社長は何をやっているのか。
 なんと驚くなかれ自らの手で、自社製品のネット宣伝をしているのだ。
 言い方をかえれば、宣伝オペレーター(一作業員)やセールスの役を演じているのだ。
 “社長の仕事”というのは、他の社員では手出しのできない、社長ならではの問題解決を計ることが、経営の定石であり、組織発展の大原則である。
 ではその“社長の仕事”とは何なのか。“対外戦略の構築”であり、その“戦略効果”により他社による市場浸食を食い止め、さらには売上の上乗せで成長軌道に乗せることである。
 戦略とは、成功すれば効果は大きいが、しかし、①効果を得るまで時間がかかり、②組織的な係わり方が求められ、③かつ持続的な活動も求められる・・というものである。
 社長が“作業”をやる会社では、発展する方が不思議で、じり貧になって当然である。


●頭の向きが変わらねば、からだの向きは変わらない
 経営体を蛇に例え、「頭の向きが変わらねば、からだの向きは変わらない」と言われる。
 経営トップが一作業員になったら、その企業の成長はストップするのは当然。
 以前北九州で、急成長した住宅会社があった。しかし、ほんの一時の光芒で終わった。
 一時の光芒で終わった主な原因は、自ら一級建築士の資格を持つ社長が、やはり資格を持ち設計に携わる部下たちの設計にケチばかりつけることにあった。
 自分の頭越しに部下に指示する社長に、まず設計部長がイヤになり、刃こぼれするように建築士たちが辞めるようになったのである。
 こうなれば、住宅という製品の品質にムラや不良が表面化し、顧客の苦情が多発し、とうとう経営は破綻した。これも社長が作業化した一例である。
 柏崎にブルボンという実力を備えた菓子メーカーがある。最初は北日本製菓という社名だった。しかしブルボンという菓子で成功するや、社名を菓子名に合わせブルボンに変えた。
 自動車のマツダは、欧文ではMAZDAと書くが、欧米人の発音を考慮した表記なのだ。
 この製薬会社は、社名変更こそ急務なのに、同族経営に執着して、バラバラ呼称のまま。
 こういう社名変更こそ社長の仕事なのに、全然関心を示さない。
 再び書くが経営トップが作業員化すると、やるべき戦略眼が濁り、会社は衰退する。
 もって、“他山の石”にしたいものだ。