役員退職金は、

(1)退職者の過去の勤労に対する対価の後払い(費用性、賃金後払説)、
(2)退職者の在職中の功労に対する報酬(利益配分性、功労報償説)、
(3)将来の生活保障について考慮されたもの(生活保障説)
 等

の性格を有するものです。

 そういう内容だからこそ、役員の受け取る退職金は、所得税法上は通常の給与等とは異なり受取人にとって有利な課税体系となっており、また、法人税法上も「不相当に高額」「でなければ」、会社の損金(税務上の費用)にすることができます。


 その役員退職金の適正額の決定については、通常の場合は、

(1)役員退職金規定にその支給限度額を定め(その計算方法は、平均功績倍率法(注1)が一般的です)、

(2)その限度額の範囲内で支給することを機関決定して支給することにより、
法人税法上の「不相当に高額でない水準」としているようです。
(注1)最終報酬月額×勤続年数×功績倍率により適正額を計算する方法です。最終報酬月額、勤続年数についてはあまり議論の余地がないため、「同業種・同規模の会社」をどう選定して功績倍率をいくらに決めるかが論点になってきます。

過去の判例を見ても、殆どが、平均功績倍率法等の一定の算式による退職金の適正額の算定を支持しています。一方、東京地裁の昭和46年6月29日の判決には、法人税法等の規定は「当該事案の特殊事情をすべて捨象して同業種・同規模の他の会社の給与の額を超える部分の損金算入をすべて否定しようとする趣旨に出たものではない」とあり、これは、会社の特殊事情があればそれを考慮して功績倍率を決める、または算式によらず退職金額を決めることの妥当性があることを示唆したものと思われます。
また、過去の判例を見てみると、平均功績倍率法による算定は以下の問題点、限界があると考えます。

1.最終報酬月額が所与(又は議論されていない)
平均功績倍率法を支持している判例は、最終報酬月額を所与としています(つまり、その報酬が過大かどうか深く議論されていません)。札幌地裁の平成11年12月12日の判決のように、報酬月額を退職事業年度に倍増させても、その倍増させた金額を前提に上記(注1)の算式を適用している例もあります。従って、これを逆手にとって、退職前に報酬を上げるという極端な方法も考える余地が生じます(もちろん、このブログは、そういう方法をお薦めするものではありませんが)。

2.同業種・同規模の会社の選定が難しい(個別事情が捨象されている)
筆者は、同業種・同規模の会社選定に当たって最も重要なのは、「在任期間中の純資産増加額(注2)」だと考えています。これが、最も役員(特に、代表者の場合の役員)の功績を表すものだと考えるからです。しかし、判例を見ると、純資産額の要素を考慮せずに、同業種・同規模の会社を選定しているものも散見されます。つまり、同業種・同規模の会社の選定自体にも更に深い議論が必要かと思います。
(注2)更に言うと、その増加額に対する退任役員の貢献度。たとえば、純資産増加額×(その役員報酬額/全人件費)で算出可能と考えます。

3.同業種・同規模の会社の「過去の実績」を基にしている。今後の実績は不問
当然、同業種・同規模として選定された会社の数値は、過去の実績です。退任する役員が今後も永続するようなビジネスモデルを作りそれがその後も有効である、等特別の場合は、その将来に亘っての貢献度を考慮する必要があると考えます。

上記より、平均功績倍率法による適正額の算定は、有効ではありますが、退任役員の功績が大きい(他社に比較して、純資産増加額が明らかに突出している等)の場合は、そういう事情を考慮して適正額を算定することも、十分に検討の価値があることだと思います。

文責:事業承継部


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なかのひと
09年08月25日 | Category: General
Posted by: pronet
 数多い関与先の中に、今でも「支出額(時)」=「経費」と思われている社長様がいらっしゃいます。「発生主義」の観点から支出額=経費ではありません。
 現在の日本では「発生主義」が原則とされています。「発生主義」とは、費用を現金支出の事実ではなく発生の事実に基づいて認識するものです。つまり、品物を購入した事実のみで「経費」となるのです。
 例えば、「掛け」で品物を購入し、代金支払は翌月の取引があったとします。この場合、「購入した月」に「経費」となり、「翌(代金を支払った)月」に「現金支出」となるのです。売上に関しても同様です。
 支出金額(時) ≠ 経費(損金)の最も解りやすい例が「固定(減価償却)資産の購入」です。
 建物・機械装置・工具器具・備品・車輌等の購入は基本的に支払った時の経費とはなりません。法定耐用年数により何年かに分けて徐々に経費(減価償却費)となります。現金支出時(支出事業年度)の全額がその時の経費ではなく、支出がない時(支出事業年度以外)も経費となるということです。
 お金の流れを表したものを「キャッシュフロー計算書」といい、「損益計算書」とは全く別のものとなります。この「キャッシュフロー計算書」は「現在の利益額」と「現在の現預金」との差額を知ることができます。現預金は少ないのに利益額は思いのほか多いという経験をした社長様は少なくないと思います。そんな場合は「キャッシュフロー計算書」を作成してみるとよいでしょう。
 借入金の返済額も「経費」ではないのか?との声も聞いたことがありますが、残念ながら「経費」ではありません。勿論、借入時の入金額(借入額)も収入ではありません。


文責:北九州支店


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なかのひと
09年08月20日 | Category: General
Posted by: pronet
 事業再生支援を主眼とした「改正産業活力再生特別措置法」(以下、「改正産活法」。)が平成21年6月22日に施行されました。
 同法では、1つの目玉として、「第二会社方式」により事業の存続を図るための各種の支援策が創設されました。
 経営悪化に苦しむ中小企業は多いと思いますが、この法律の施行により事業再生が可能となる会社もかなりの数になるのではないかと思います。
 以下、簡単にですが内容をご紹介したいと思います。
 
1.「第二会社方式」とは
  収益性のある優良事業部門を別法人(第二会社)に分割等して事業の存続を図るとともに、負債・赤字を残した旧会社を清算等する再生手法の一つです。金融機関の協力が得やすい等の理由から、抜本的な再生を図る際に活用するケースが最近増えてきています。
  過剰債務を抱え、かつ、収益性のある事業を有した会社であれば検討の余地は十分にあると思います。

2.「第二会社方式」に対する支援措置
  (1)営業上必要な許認可の承継 

   今までの会社分割等では、旧会社の許認可の引継ぎが問題となるケースが多かったのですが、これを解消するための支援措置が設けられました。
  (2)登録免許税・不動産取得税の負担の軽減措置
   「第二会社方式」による事業譲渡・会社分割を行う場合、不動産等の移転が必要なときに発生する登録免許税及び不動産取得税が軽減されます。
  (3)必要な事業資金に対する金融支援
   ・日本政策金融公庫による低利融資制度
   ・信用保証協会による債務保証

3.改正産活法の適用要件
  一定の要件の下、「中小企業承継事業再生計画」を策定し、国の認定等を受けなければ上記2の支援措置の適用を受けることができません。


文責:法人ソリューション1部


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なかのひと
09年08月17日 | Category: General
Posted by: pronet
 会社経営を行っていく上で様々な課題は日々でてきます。ある一つの課題を解決するために4段階のステップがあるとします。最初の段階で、5つの選択肢が想定されています。次の段階では、その選択肢のひとつひとつに対して、さらに5つの選択肢が考えられています。つまりその課題の内容に入ろうとすると、第一段階で5となり、さらに25の選択肢が提示される。さらに3段階目で125となり、最終段階の4段階では何と625という膨大な選択肢にふくれ上がってしまいます。これらを一つ一つ検証することは事実上、無理です。にもかかわらず、幹部としての資質に欠ける人は「間違った選択をしたらどうしよう」という恐怖心から、最初の一歩を踏み出す事ができないのです。
 こんな幹部が率いるチームの仕事は、遅々として進みません。
 課題という大きな川があるとします。「まずは川に飛び込んでみるのです。」橋を探したり、船で渡ったり、筏を作ったりそのような事を考えているうちに時間は刻々と過ぎ、日が暮れてしまいます。そのような事をいちいち考える前にまずは思い切って飛び込んでみるのです。飛び込んでみると、意外と川が浅く、水も冷たくない。それならそのまま渡ってしまえばいい。思った以上に急流で、もし渡るのが困難なら、その時に考えればいいだけの事。
 仕事も同様、最初の一歩も踏み出さず、ただ考えあぐねている人がどうして仕事の成果を上げる事ができるであろうか?考えあぐねている間に時間は刻々とすぎ、有能な幹部に次々に追い抜かれてしまいます。

 「仕事にはスピード感と勢いが必要」だということなのです。計画段階であれこれと悩み時間を浪費するよりも、実行そのものに時間をかけるのが正解なのです。ただ、この仕事の進め方は様々な局面で多用されますが、万能ではありません。将来を左右するような課題が発生した時などは、当然綿密な準備を重ねて慎重に行う必要があります。
 しかし、そのような事は頻繁に起こりうることではありません。基本的には実績や成果をあげていく上ではスピード重視の考え方は欠かせないのです。普段の仕事は60%をメドにスピード優先で行い、大事な案件は、完成度を100%に近づける事が必要です。
 悩めば悩むほど時間を浪費してしまいますし、前に進む事はできません。まずは、動いてみる。確かに不安はあります。しかし、その一歩を踏み出さない事にはその課題をクリアすることはできません。また、自分自身を高めていくためには幾度の失敗を繰り返し、それを乗り越えてこそが自分自身の成長への繋がっていくのではないかと思います。
 「スピード感と勢い」この思い切った行動こそが幹部の資質には必要なのです。そういった幹部には自ずと部下はついてくるものです。


文責:ワンストップソリューション部


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なかのひと
09年08月10日 | Category: General
Posted by: pronet
 阪神淡路大震災から14年の歳月が過ぎ、あの痛ましい出来事の記憶がわずかに薄れ始めたさなかに、新潟県中越地震や福岡県西方沖地震など相次いで大型地震が発生し、当時、私どもも福岡県下では、被害報告を多数受けました。特に、平成17年3月20日午前10時53分に発生した、「福岡県西方沖地震」で、不幸にも罹災された被災者の方々には、心よりお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く被災前の平穏な日常生活を取り戻せることを、お祈りして止みませんでした。

 今回は、福岡県民の加入率が16%前半(「福岡県西方沖地震」発生前)と言われる地震保険について、お話しさせていただきたいと思います。
 地震保険には、
A.一般住宅や居住部分のある店舗併用住宅の建物および家財が補償の対象となる「家計地震」(住まいの地震保険)と、
B.Aで担保されない営業用の建物、什器、機械、商品などについて、地震危険を火災保険の特約として補償の対象とする、「地震危険拡張担保特約」
の2種類があります。
実際に罹災された方のコメントが新聞紙上にも掲載されていましたが、特に「家計地震」では、実際に被った損害額に対して、支払われる(認定された)保険金額が「思いのほか少ない!」と、お感じになった方が、多かったようです。
ところで、そもそも家計地震の主な目的は、

1.法律(「地震保険に関する法律」)に基づいて、政府と民間の損保会社が共同で運営する制度
2.利潤を求めず、保険料は準備金として積立てられる
3.地震災害による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする


ですので、あくまで被災者の方々への一時的なお見舞い費用としての概念が強く、実質損害をほぼ完全に填補する火災保険などの保険商品とは、イメージが大きく異なります。しかしながら、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏のテレビCMでもご紹介されているとおり、地震による火災の被害は、火災保険では支払い対象にはなりませんし、地震による建物の倒壊なども地震保険を付帯していないと、全くカバーできません。
 また、支払い認定基準も全壊、半壊、一部損壊と3種類で、損保会社が委託した鑑定人が実地調査を行い基準に沿って判定を行うわけですが、何故そのように判定されたのか?なども、一般のご契約者様には分かりづらく、理解しがたい要因の1つになっているのではないかと考えます。

 地震保険の支払い基準や、仕組み、どのようなケースで実際に支払われるのか?など、可能な限り実例を交えて、ご契約前に十分な説明を行う「説明責任」を負っていることを、我々損害保険を取り扱う代理店のエージェントが、再度しっかりと自覚しなければなりませんし、保険契約を結ぶ際にはご契約者様の立場としても、なぜ?どうして?といった、素朴な疑問をどんどん投げかけていただくことは、こと地震保険に限らず、あらゆる保険契約に必要不可欠であると考えます。

 次回は、一般物件、工場物件などの「地震危険拡張担保特約」についてお話したいと思います。



文責:株式会社プロネットインシュア


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なかのひと
09年08月06日 | Category: General
Posted by: pronet
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